三重朝日物流センター(三重県三重郡朝日町)地域と共に生きるサステナブルな物流施設
日本トランスシティ株式会社さまの物流拠点「三重朝日物流センター」を紹介。「環境に配慮した事業推進」を重要課題(マテリアリティ)の1つに掲げる同社とともに、「脱炭素」と「生物多様性保全」の2つの環境課題への解決に向けて取り組んだ事例です。
脱炭素への取り組み
最上位ランク『ZEB』認証の取得
建物の屋根上には3,146kWの太陽光発電パネルを搭載。快適な室内環境を維持しながら省エネルギー・創エネルギーを実現する施設設計により、GHG排出量を1,913t-CO2/年削減※。BELS評価で最高ランクの『ZEB』を取得しました。
※エネルギー消費性能計算プログラム算定結果における基準建物と比較した場合の一次エネルギー消費削減量をGHG排出量に換算。
なお、余剰電力については中部電力ミライズ様へ売却し、日本トランスシティグループの別拠点で当該再エネ電力を使用するスキームを構築。自社発電由来の再エネ利用によるGHG排出量の削減を図っており、2020年度のGHG排出量の10%に相当する15,768t-CO2/年の削減を見込んでいます。
生物多様性保全への取り組み
朝日丘陵から朝明川をつなぐ、多様な生態系環境の創出
建設地は朝日丘陵から朝明川へと豊かな自然が広がる地域であり、周辺一帯は広大な水田や水路が広がっていることから、地域に調和し、共生する物流施設を計画。敷地内には、動植物の生息空間となる水辺や草地、樹林、砂礫地などの多様な環境をつくり、全体で9,312m2の緑地を創出。中部地方※1の物流施設ではじめて、一般社団法人いきもの共生事業推進協議会による、いきもの共生事業所®認証(ABINC認証)を取得しました※2。
- ※1 新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
- ※2 日本トランスシティおよび大和ハウス工業の共同取得
周辺の里地里山
朝明川
近隣の植生調査の結果を踏まえ、朝日丘陵の構成種であるコナラ、クヌギなどを中心とした植栽計画を策定。加えて、ヤマザクラなどの食餌植物を選定することで、鳥類を呼び込む計画としています。また、建設施設の周辺を7つのエリアに分け、景観向上や遮音性の向上、まとまりのある緑地の創出など、テーマに沿った植栽を行いました。
敷地内には生き物の生息空間としてビオトープを設置。メダカやドジョウ、カワニナなどのほか、施設周辺ではホタルの生息が確認されていることから、将来的にはホタルが生息できる水辺環境の創出を目指し、時間をかけて環境の整備を進めています。なおエリアの水辺林では、落ち葉や倒木がそのまま分解、土壌となるよう、自然循環を最大限に活かした設計を施しています。
シオカラトンボ
抽水植物のミソハギ(手前)とガマ(奥)
モニタリング・維持管理を通じた地域社会とのつながり
敷地全体における植生の維持管理については、定期的に従業員が実施。さらに、ビオトープについては、地域市民団体「埋縄ほたるの会」とともに、月に1回程度の維持管理活動を行い、地域とのコミュニケーションの場としても活用しています。 また、定期的に生き物観察会を実施し、周辺地域の里山内の池や小川で捕まえた生き物を放流し、生息環境の整備を進めています。今後自然観察イベントや環境教育プログラムなどを継続的に実施することで、地域とのつながりをさらに深めていきます。
ホタルの生息に適した小川を再現
生き物観察会の様子
三重県の準絶滅危惧種であるコチドリの生息地が近接することから、二次調整池には砂や小石を敷き、営巣環境を整備。壁面には緑化ブロックを採用しました。また、事務所周辺エリアは、食餌植物を中心に植栽樹種を選定し、立体的でまとまりのある緑地を創出しながら、そこに鳥類を呼び込む計画としました。
調整池エリア
事務所周辺エリア
お客さまの声
当社では、企業理念の社会的役割に「地域とともに生き、広く社会の発展に貢献する」ことを謳っており、まさにそれを体現する施設が完成したと自負しています。
ビオトープの設置については、物流センターであっても地域と生き物が共生でき、また、次世代の環境教育の場にもなりえるという点が決め手となりました。生き物観察会などのイベントを通じて、地域の皆さまにつながるきっかけ作りとして、想像以上の役割を果たしてくれています。
また、社内でも、維持・管理活動や、ABINC講習会への参加を通じて、生物多様性保全に関心を持つ社員が増えつつあると感じています。生物多様性保全の取り組みは積み重ねが大切であり、いかに多くの人を巻き込めるかが成功の鍵の1つだと考えています。ここで得た知見を、2事例目にどうやってつなげていくかを考えながら、これからも、ステークホルダーのみなさまと、さまざまな挑戦を行っていきたいと考えています。
日本トランスシティ株式会社
執行役員 経営企画部長
棚橋 昭徳さま
日本トランスシティ株式会社
業務部
中川 輔さま
室長補佐(当時)
横井 直樹さま
営業担当者の声
生物多様性保全の取り組みは、個人的には初めての試みであり、知識もノウハウもいちから積み上げていく必要がありました。何度も現場へ足を運び、地域や行政の理解を得ながら、日本トランスシティさまと二人三脚で歩んでこられたからこそ、成しえた事例だと思っています。生物多様性保全にはさまざまなアプローチがあることを学びましたので、ここで得た知見を、今後のお客さまへの提案にも活かしていきたいと思っています。
三重支店
建築営業所 営業課
主任 桑原 啓
企画担当者の声
建設地は河川や丘陵に囲まれた農地であったことから、周辺には今も多くの水田が残っています。そのために、生物多様性保全の取り組みが、周辺エリアとの親和性が高い施設開発につながるのではないかと考えました。将来的にはホタルも生息できる環境の創出を目指し、地域に根差し、長く愛される施設であり続けてほしいと願うとともに、このような取り組みを通じて、両社の企業価値向上にもつなげていきたいと考えています。
本社
都市開発部 管理部
次長 正垣 宏
基本情報
創エネ含む 227%
※掲載内容は、取材当時(2024年7月)の情報です。