伝統的な生け花を暮らしに取り入れるのは難しそうだと思っていませんか。
自宅で気軽に楽しむためのポイントを、古流松藤会(こりゅうしょうとうかい)家元の池田理英先生に伺いました。
生け花を美しく仕上げるコツは、作品のどこを見せたいかを明確にすること。作品の中で自分はどの花が一番好きなのか、またどういった動きを見せたいのかを考えて決めます。作品の主役を意識しながら全体を調整するとまとまりやすくなります。
また、飾る空間と作品とのバランスも重要です。生け終わったら、必ず一歩下がって確認しましょう。その際に注意したいのが、見る人の目線を意識すること。床の間など後ろに壁を背負う場所に飾るのなら、正面から見た姿が美しくなるよう整えますが、テーブルの中心など四方から視線の集まる場所に飾る時は、どの角度から見てもきれいに見える花を美しく飾るコツよう調整しなければなりません。
また、生け花は普段目に留まりやすく、生活に彩りを添えてくれる場所に飾ると良いでしょう。昔は不浄の場所に飾ることはNGとされていましたが、今では家中のさまざまな場所に飾ることができます。涼しくて日が当たりすぎないところだと、花の元気が続くので理想的です。
花材の中には毒のある植物もあるので、小さいお子さまやペットのいるご家庭では、安全な置き場所を選ぶ配慮が必要です。例えばテグスを使って部屋の高い位置に吊るしたり、壁に固定できる花器などで飾ると、子どもの手も届かずペットが跳び乗る心配も少なくなります。
生ける前には、切り口からの給水を良くする「水揚げ」を行うと、花を元気に保つことができます。花材により適した水揚げ方法があり、切り口近くの皮をむくなどで吸水面を多くとることも簡単な方法のひとつですが、最も基本的なものは「水切り」。器に張った水の中で茎を切ることで、切り口からの空気の進入を防ぎ、吸水性を高めます。植物に元気がない時は、水切りをしてから深めの容器に水を入れて茎を沈めましょう。風の当たらない涼しい場所に数時間放置すれば、茎の中に水が閉じ込められて揚がりやすくなります。
生け花は一度完成したら終わりではなく、お手入れも大切。花の状態に応じて随時整理を行います。枯れたものを除いたり花材を適宜追加したり、一輪挿しなど別の花器に移したりと工夫することで、最後の一本まで楽しめます。
水は少なくとも一日一回替えるのがベスト。毎日交換するのが難しい場合は、水を腐りにくくする鮮度保持剤を入れておきましょう。
花材は飾る空間に適したものを選びましょう。例えば食事をする部屋なら香りの強すぎる花は避けた方が良いでしょうし、反対にお手洗いには香りの良い花を生けると、自然の芳香剤として楽しむことができます。
生け花に使う花材は生花だけとは限りません。いわゆる「枯れもの」、つまりドライフラワーも生けることができます。枯れものを作品に加えると、生花とはまた違った独特の風情を演出してくれます。ドライフラワーは買うこともできますが、自宅で作ることもできます。種類にもよりますが、生けていた生花の元気がなくなってきたら、すぐに捨ててしまわず風通しの良い場所に吊るすなどしておけば、ドライフラワーとして再び活用できます。
何か花を飾る目的がある場合は、お花屋さんに相談しながら決めるのがベター。例えば翌日の来客のために飾るのに、一日で枯れてしまう一日花を選んでしまうなどの失敗を防ぐことができます。
ヒマワリ、アイビー透明な器を使う時は、茎を短めにしたり、ビー玉などを入れたりと、器の中もきれいに見える工夫をしてみましょう。
アンスリウム、ガマガマは写真のように折り曲げて、作品にシャープな動きをつけることもできます。
カレススキ、リンドウ、
ミリオンバンブーススキは枯れた後でもフワフワとした穂が楽しめる花材。ドライフラワーとして長く保存できます。
アドバイス
池田 理英先生(いけだ りえい)
伝統的な生花と、時代に合わせた現代華を基本とする「古流松藤会」の六世家元。家元の妹であった祖母の指導を幼少期より受けて育つ。古流松藤会の勉強を始めたのは高校時代。以降研究・努力を続け、2010年に松藤斎六世として家元を継承し四代目池田理英を襲名。(公財)日本いけばな芸術協会理事。
取材協力:全国花き振興協議会
花産業6団体でつくる連合組織。農林水産省が推進する「くらしに花を取り入れる新需要創出事業」を実施し、新たな花文化の創出を目指して「Flower Friday※」の普及に取り組んでいる。
※Flower Fridayとは、週末に花や緑を飾ってリラッ クスした時間を楽しむための提案。
2019年7月現在の情報となります。