日本で、まだ食べられるのに廃棄される食品は年間約522万トン。
そのうち家庭から出る食品ロスは半量近くの約247万トン※にものぼります。
食品ロスを減らすために私たちが家庭で取り組める工夫について、
ベターホームのお料理教室・大西千香子さんにお話を伺いました。
※農林水産省及び環境省「食品ロス量(令和2年度推計)」
家庭の食品ロスは買い物から始まっています
家庭で発生する食品ロスの主な原因は、食べ残しや野菜の皮や葉など食べられる部分の廃棄、買ったまま手付かずの食品などです。「まずは買い過ぎを防ぎ、必要なものを必要な分だけ買うこと。ある程度メニューを決めて、必ず買い物リストを持って買い物に行きましょう」とベターホーム協会・大西千香子さん。「まとめ買いする場合は、乾物や缶詰などのストックも活用して上手にやりくりしましょう」
食品をおいしく使い切るための工夫
「すぐに食べない肉や魚は、新鮮なうちに冷凍保存を。下味を付けるなど、使いやすく下ごしらえしておけば、毎日の食事づくりに便利です」と大西さん。食品は適切な環境で保存することで鮮度が長持ちします。「野菜は切り口から傷んでいくので、丸ごと買って1週間で食べ切るのもおすすめです。例えば、キャベツなら、ロールキャベツ、ポトフ、コールスロー、お好み焼きなど、メニューも考えやすいですね」
防災用備蓄品やいただきものも有効活用
防災用備蓄品などのストック食品は気付いたら賞味期限が切れていたということも。「定期的にチェックする、日々の食事に使いながら買い足すなど、ルールを決めておきましょう」。お歳暮やお土産などのいただきものも、手付かずのまま忘れがちです。「食べないのなら早めに友人や知人に差し上げるほか、フードバンクなどに寄付する方法もあります」。ただし、各団体ごとに食品の種類や賞味期限等の条件があるので、事前に確認が必要です。
適した環境で保存
食品は温度や湿度、光など、食品に合った環境で保存することで鮮度が長持ちします。表示に「冷暗所」とある場合は、暗く涼しい場所で常温保存すればよいのですが、夏場や暖房がきいた室内では冷蔵庫に入れた方がよい場合もあります。
野菜の鮮度を保つ
野菜は水分が付くと傷むので、洗わずに保存袋に入れ、冷蔵庫の野菜室などで保存。栽培されているときの状態に近づけることで野菜に負担がかからず、鮮度が長持ちします。
冷蔵庫内では、葉野菜やアスパラガスなどは立てて保存。寝かせると起き上がろうとして、エネルギーを消耗し劣化しやすい。なすは寒さに弱いので、新聞紙などに包んで保存袋に入れて冷蔵。
いも類、玉ねぎなど常温保存できる野菜はかごに入れて、日光が当たらない涼しい場所で保存。
冷蔵庫は整理整頓
冷蔵庫は詰めすぎると冷却効率が悪くなるだけでなく、奥に入れたものが見えず忘れてしまうことも。冷蔵庫での保存が必要なものだけを入れ、手前から使うように整理整頓。週に1度は庫内の掃除を兼ねて、残り物一掃メニューにするのもよいでしょう。
野菜を無駄なく食べる
捨ててしまいがちな野菜の皮や葉には栄養がたっぷり。大根やにんじんなどの根菜類は、よく洗って加熱すれば皮ごと食べられます。大根やかぶの葉は炒め物や漬物などに。葉と根の部分を切り離して保存することで、どちらも鮮度を保てます。
葉や茎をおいしく調理
独特の苦みや辛み、食感が硬いなどクセのある葉や茎。細かく刻んだり、オイルでコクや風味をプラスしたり工夫すればおいしく食べられます。
かぶの葉をちりめんじゃことごま油で炒め煮に(左)。ブロッコリーの茎は薄切りにして、にんじんの皮、ベーコンと炒めて洋風きんぴらに。
残り野菜を楽しむメニュー
残り野菜は1カ所にまとめておき、たまったらスープや豚汁などにして食べ切りましょう。お好み焼きやオムレツの具にするのもおすすめ。
残り野菜を刻んでオリーブオイルでじっくり炒め、水だけで煮込んだミネストローネ。野菜のうまみと栄養がたっぷり!
中途半端に残った野菜はラップで包んで、保存容器や保存袋にまとめておく。
おいしく活用できる冷凍保存
新鮮なうちに食材にあった方法で冷凍することがおいしさを保つコツ。ただし品質は徐々に落ちていくので、数週間〜1カ月程度で食べ切りましょう。
鮮度を保つ冷凍の基本
空気に触れると酸化や脂焼けの原因に。使いやすい分量に小分けし、なるべく薄くしてラップに包み、さらに保存袋に入れて密封。中まで早く凍らせて、ダメージを防止。
ステンレスのトレーの上にのせ、保冷剤を利用して冷凍庫で急速冷凍。
保存袋には品名と食べ切る目安を書いておくこと。キッチンに専用の油性ペンとマスキングテープを用意しておくと便利。
こんなものも冷凍できます
ちくわやさつま揚げなどの練り物は封を開けたら残りを冷凍。ちりめんじゃこやバター、納豆なども冷凍可能です。
油揚げやちくわは用途に応じて使いやすい大きさに切って冷凍。あさりは砂抜きして冷凍しておけばすぐに使える。
野菜をおいしく冷凍
水分や繊維の多い野菜は、基本的には冷凍に向きません。青菜や根菜類などは、かためにさっとゆでて冷凍し、食感の大きな変化を防ぎましょう。ねぎなど細かく刻んでそのまま冷凍できるものもあります。
ほうれん草はさっとゆでて冷やし、水気を絞って冷凍。自然解凍でおひたしやごまあえにしたり、凍ったまま加熱調理。
かぼちゃはゆでてペースト状にして冷凍。スープやデザートに使える。
きのこは生のまま冷凍可能。石突きを取り小房に分ける。いろいろなきのこをミックスしても。そのまま加熱調理に。
トマトは丸ごと冷凍。凍ったまま水に浸けるとするりと皮がむける。そのまますりおろしたり、煮込み料理に。
魚や肉はダメージを防いで冷凍
魚や肉は、下味を付けておくと傷みにくく、調理の際も便利。シンプルに塩と酒、しょうゆなどで下味をつけたり、塩こうじやみそ漬けにするのもおすすめ。ひき肉は傷みやすいので加熱してから冷凍すると安心。
生鮭の塩こうじ漬け(左上)と、豚ロース肉のみそ漬け。保存期間約1カ月。冷蔵庫に移して半日おいて解凍後、加熱調理。
アレンジのきくおかずに調理
ミートソースやそぼろなどアレンジのきくおかずに調理して冷凍すれば、毎日の食事づくりがラクになります。
牛薄切り肉、玉ねぎ、しょうがを甘辛く煮た「牛丼の素」。電子レンジで加熱解凍してごはんにのせるだけで牛丼に。豆腐と一緒に煮ると肉豆腐に。
お話を伺ったのは…
ベターホームのお料理教室 梅田教室・講師 大西 千香子さん
「買ったものは、捨てることなく使い切るすべを考えることが大切です。できることから取り組んでいきましょう」。1963年に消費者教育組織として発足したベターホーム協会は、全国で料理教室を開催。「食」を大切に考え、食べものを無駄にしないで使い切るノウハウを1冊に網羅した『大切な食べものを無駄にしない本』発行。