復興公営住宅とは、災害で家を失った被災者に安い家賃で貸し出す公的な賃貸住宅で、「災害公営住宅」ともいわれます。復興に欠かせない恒久的な住まいですが、東日本大震災では建設が遅れ、先の阪神・淡路大震災では孤独死が問題になりました。大和ハウス工業は、迅速な供給とコミュニティ再生という大きな課題を解決する復興公営住宅の建設に取り組んでいます。
約40万戸超(※)の住戸が全半壊した東日本大震災に続いて、熊本地震、西日本豪雨、令和2年7月豪雨など、国内では災害が続いています。
大和ハウス工業は、東日本大震災の直後から応急仮設住宅の建設に尽力してきましたが、「一日でも早く日常生活の基盤となる住まいをお届けしたい」と、震災翌年から復興公営住宅の取り組みを本格化させました。
当時は、自治体による用地確保が難航し、建設が停滞。そんな中、大和ハウス工業が提案したのは「民間企業が土地の調達や造成から住宅建築までをトータルに進め、自治体がそれを買い取る」という、復興公営住宅では先例のないスキームでした。独自の土地活用ノウハウや住まい・街づくりの経験を生かしたこの提案が採用され、その後、建設は加速度的に進むことになりました。
- ※総務省消防庁「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)被害報」(令和4年3月1日)
復興公営住宅
(東日本大震災・熊本地震・西日本豪雨・令和2年7月豪雨)
建築・採択実績 3,547戸
- ※令和4年5月現在
- ※大和ハウス工業
もう一つの課題はコミュニティの再生でした。災害公営住宅は、これまで暮らしていた場所を離れ、新たな人間関係を築く場所。その難しさや高齢化もあり、阪神・淡路大震災の時は孤独死が社会問題化しました。円滑に新たなコミュニティをつくり、生活の質を向上させるにはどうすればいいのか。大和ハウス工業は良好なコミュニティ形成を目的に、さまざまな工夫を凝らした復興公営住宅を創り出しました。
家の中と外の「会話」を促す
- 特長
- 通常、マンションや公営住宅などの集合住宅は、共用の通路側に個室を配置し、リビングは玄関から見て一番奥につくります。それとは逆に、大和ハウス工業が提案する「リビングアクセス型住戸」ではリビングを共用通路側に配置しています。
- 狙い
- リビングにいる人と通路を歩く人が「元気?」「何してるの?」と気軽に声をかけあい、自然にご近所づきあいが生まれます。
建物を区切り多様な「間」をつくる
- 特長
- 戸建て住宅の多い地域でも近隣に調和するよう、大規模な一つの建物ではなく、小規模な建物を複数配置。小さく分節した住棟を、ずらして雁行配置しています。
- 狙い
- 住棟間の風通し、日当たり、視線の抜け、プライバシーに配慮した表情豊かな街並みが生まれます。さらに、憩いの場となる小さな「たまり空間」、倉庫・屋外作業場・流しなどを備えた裏庭「ユーティリティヤード」など、多様な交流空間も形成できます。
人の行き交う通りで「賑わい」を生む
- 特長
- 前面道路から敷地内につながる歩行者専用の「通路」を設置。そこへ、リビングアクセス型の「住戸と専用庭」、広場や駐車場、ユーティリティヤードへ続く「路地」などをつないでいます。
- 狙い
- ご入居者同士の生活がゆるやかにつながり、毎日の声かけや気軽な会話など日常の交流を促してコミュニティを醸成。敷地内に賑わいが生まれます。
「美しいわが家」への愛着を育てる
- 特長
- 全体の調和を図りながら、隣り合う住戸の仕上げ・色彩を変えています。また、行政との打ち合わせの上で敷地境界や路地空間、広場などを緑化しています。
- 狙い
- 画一的な景観ではなく、まるで個々の「家」が集まったような「街並み」をかたちづくります。そこに豊かな緑が彩りを添え、よりいっそう愛着のわく良好な生活環境へと育っていきます。
大和ハウス工業の原点は、大型台風で家を失った人々を思い、開発した「パイプハウス」です。それから半世紀以上にわたって技術力や設計力を進化させ、繰り返しの地震に強い家「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」などの開発に結びつけました。
様々な自然災害と正面から向き合ってきたことで、困難な課題を解決し、まちの復興に携わってきた大和ハウスグループ。しかし東日本大震災から10年以上たった今でも、まだ災害は後を絶ちません。大和ハウスグループにできることは、まだこれからも多くあるはずです。