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コラム No.53-46

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戦略的な地域活性化の取り組み(46)公民連携による国土強靭化の取り組み【8】デジタル田園都市国家構想による地域活性化

公開日:2022/02/28

国は、2021年11月、地方の豊かさをそのままに、利便性と魅力を備えた新たな地方像を提示することをコンセプトとした「デジタル田園都市国家構想」の実現に向け、デジタル田園都市国家構想実現会議の開催を公表しました。

デジタル田園都市国家構想の概要

デジタル田園都市国家構想実現会議の資料によれば、デジタル田園都市国家構想とは、「産官学の連携の下、仕事・交通・教育・医療をはじめとする地方が抱える課題を、デジタル実装を通じて解決し、誰一人取り残されず全ての人がデジタル化のメリットを享受できる心豊かな暮らしを実現することで、地域の個性を活かした地方活性化をはかり、地方から国全体へのボトムアップの成長を実現し、持続可能な経済社会を目指す」施策であるとしています。また、その実現に向けた視点は、(1)デジタル基盤の整備、(2)デジタル人材の育成・確保、(3)地方の課題を解決するためのデジタル実装、(4)誰一人取り残されないための取り組みを軸として推進する方針です。
まだ議論が始まったばかりですが、特に地方において不足している高速ネットワークやデータンセンター、5G等の情報インフラを早急に整備するとともに、デジタルインフラやサービスの開発・運用を担う人材を育成して、地方産業を振興し経済成長を底上げすることで、国全体を持続可能な社会に変革していく構想であると想定できます。また、先行しているICTを活用した情報基盤を整備して地域課題を解決するスマートシティ構想や、地域を超えて生活や暮らしを支えるプラットフォーム創りを目指すスーパーシティ構想、総合的・基本的な科学技術政策の企画立案及び総合調整を行う「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」といった、先行する情報戦略の概念的集約を行い、国の方向性やコンセプトをより明確にした政策とも考えられます。
いずれにしても、デジタル化の遅れや過度な大都市一極集中が課題となっている日本にとっては、持続可能で強靭な国家を構築する上で、重要な構想であることは間違いなさそうです。

先進事例としてのフィンランド「Aurora AI(オーロラAI)」

フィンランド共和国は、日本よりやや小さい国土面積に人口約550万人が暮らす北欧の国です。そのフィンランドで進められているのがAurora AIです。Aurora AIとは、政府が主体となって推進する、国民ひとり一人の幸福(well-being)な人生を実現するための、官民一体型の課題解決ネットワークとされます。具体的には、まず政府が、国民が出産や結婚、就職、衣食住や経済など生活、健康・福祉等の各ライフイベントで直面する課題を綿密に調査し、データベース化してプラットフォームを構築、国民は自身が抱えている課題をAurora AIにチャットボット等で相談することで、AI(人工知能)が現在・将来にわたって必要となる公民サービスを提案するプッシュ型のサービスシステムです。また、適切な解決サービスがない場合には、新たなサービスを公民が連携して創出するエコシステムも備えています。フィンランドでは、日本のマイナンバーに相当する公民をつなぐデジタル・オンラインが普及しているという背景はありますが、生活者視点に立ったデジタル田園都市構想の一つのモデルとして、注目に値する取り組みだと思います。

デジタル田園都市実現に向けた地域の取り組み

2022年1月28日、総務省から住民基本台帳に基づく2021年の人口移動報告が発表されました。それによると、東京都への転入人口は2014年以来最小となり、23区では転出超過となっています。一方、東京を除く首都圏各県の一部の県では、転入超過が拡大しており、コロナ禍の長期化とテレワークの普及もあって、東京一極集中化が是正されつつあるようです。さらにこの傾向が地方へと拡大することが期待され、地方都市において、その受け皿づくりが始まっています。例えば埼玉県は、北陸・上越新幹線の本庄早稲田駅周辺を「本庄地方拠点都市地域」として指定し、大学の地方キャンパスを誘致、産学官連携による国際化に対応した「職」「住」「遊」「学」が整った地域づくりを進めています。
その他にも、地方都市において、廃校等遊休施設を活用したシェアオフィスやコ・ワーキングスペースを設営する公民連携事例が多数みられます。これら地域の取り組みがデジタル田園都市国家構想で進められる情報基盤と連携した時に、地域特性に応じた新産業の創造、ひいては生産性の底上げにつながるのではないでしょうか。

「幸福度の高さは、生産性や創造性の高さに比例する」ともいわれています。大都市のベッドタウンとは違う「田園都市」を実現するには、DXの推進にとどまらず、働き方やライフスタイルそのものの変革が必要となるでしょう。その意味では、住民生活の基盤となる地域環境を、ある種の公共財として、公民連携、住民参加の下に開発・活用することが、さらに重要になってくると思います。

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