美しい空間をつくる引き算のデザイン
公開日:2015/05/25
┃「less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」
20世紀建築の巨匠ミースは、「less is more(より少ないことは、より豊かなこと)」という言葉を残しました。装飾を重ねるデザイン手法もありますが、今回は構成要素を減らしていくことで生まれる、シンプルで完成度の高い空間づくりについてご紹介します。
美しい空間をつくるには、設計の段階でディテール(細部)を整える配慮が大切です。たとえば壁面は、柱や梁や開口部による凸凹を減らし、シンプルな矩形(長方形)に近づけると整った印象になります。窓を設ける場合は、窓と天井面、窓と壁の角との間に狭い壁面ができないように。また、天井に高低差をつけてカーテンレールを隠す手法や、天井に穴が開くダウンライトではなく、光源を見せず壁や天井を照らす間接照明も有効です。建築的工夫により、大きなコストをかけずに端正な空間をつくることができます。
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要素を減らしてすっきりと
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■ 見えない鴨居
鴨居を天井に埋め込むことで、天井がつながりきれいな表情に仕上がります。
■ 宙に浮く階段
階段の踏板を支える「ささら桁」を省いたデザイン。空間に軽やかさと明るさが得られます。
■ カーテンを建築と一体化させる
垂れ壁を設けてカーテンレールを隠したり、開けた時もカーテンが隠れるよう工夫して、窓まわりをすっきりさせます。
■ 一面一材
壁、床、天井は、一つの面に対して一つの素材を用います。とくにアクセント壁は矩形をつくって美しく。
■ 小壁のない窓
窓を設ける時は、端に寄せて小壁をつくらないように配慮。天井の高低差や壁厚で調整することができます。
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デザインと機能性の兼ね合い
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■ 黒竹の把手
和室に設けた納戸の建具に黒竹をあしらい、床柱風のデザインと、実用的な把手を兼ねました。
■ 巾木を省く
壁と床の接合部分を保護する巾木。頻繁に出入りしない場所なら省略し、きれいな壁面を演出することも可能です。
ディテールの整った空間には、デザイン性の高い家具や上質なカーテンがよく映えます。ダイワハウスの設計士とご相談いただき、満足できる住まいを実現してください。
芦刈 創一
大和ハウス工業株式会社 本店 住宅事業部 設計部 一級建築士・ハウジングマイスター