相続と贈与税について
公開日:2016/09/30
相続と贈与を考えるとき大切な視点が2つあります。一つは、相続と贈与をトータルで考えて税金を少なくしようとするものです。もう一つは、親子間などで財産を承継するにあたり、それぞれ人生の段階で必要な資金を考えて、承継タイミングを検討するという点です。これから、この2つの視点に沿って、どのように財産を承継していけばいいのか見ていきます。
1.相続税と贈与、どちらがお得?
最初に、相続税と贈与税の税率を比較すると、例えば、財産が5,000万円であれば相続税は税率15%ですが、贈与税は最高税率の55%となってしまいます。
※相続は、相続人1人の場合、贈与については、20歳以上の子どもへの贈与の場合に、基礎控除だけを考慮
また、相続税には「配偶者の税額控除」、「小規模宅地の特例」などの特例があります。そのため、一般的には、相続税のほうが“お得”ではあります。
しかし、平成27年の相続税改正で、相続税の基礎控除が引き下げられ、より多くの人が相続税の対象となるようになりました。例えば、配偶者と子ども2人がいた場合、従来の基礎控除は8,000万円でしたが、改正により、4,800万円に引き下げられています。つまり、従来は8,000万円以上の財産がなければ、相続税の対象ではなかったのですが、今は4,800万円以上あれば、相続税の対象となってきます。
そのため財産を守るためには、早いタイミングから贈与を活用し、相続財産を減らしておくことがポイントになります。
※配偶者1名+子ども2名とする
2.2つの贈与と使い分け
財産の贈与には暦年贈与と相続時精算課税の2つの方法があります。どのような時に活用すればいいのかを見ていきます。
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(1)暦年贈与の活用の仕方
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暦年贈与は、1年間の贈与に対して贈与税がかかります。ただし、毎年110万円までは贈与に対しては贈与税がかかりません。そのため、仮に配偶者と子ども2人がいる場合、毎年全員に110万円を贈与すれば、10年間で3,300万円、20年間で6,600万円を相続財産から減らすことができます。
相続税は財産額が多くなると税率も高くなる累進課税ですので、相続財産を減らせば相続税率も下がり、相続税を大きく削減することもできます。そのため、状況によっては、贈与税を負担してでも、相続財産を減らしたほうがいい場合も考えられます。
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(2)相続時精算課税の活用法
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相続時精算課税は、60歳以上の親または祖父母から20歳以上の子または孫に対して財産を贈与した時に、2,500万円を超える部分に対しては、20%の贈与税が課せられます。
ただし、相続時精算課税を選択では、贈与された方が亡くなられた際に、この贈与財産も含めて相続税を計算します。相続時精算課税は、いわば相続税の仮払いのようなものです。また、一度相続時精算課税を選択すると、暦年贈与を行うことができません。
なお、相続時精算課税は、60歳以上の親または祖父母からの贈与が対象ですが、平成31年6月30日までは、「相続時精算課税の特例」として、住宅取得等の資金の贈与であれば、60歳未満の親または祖父母からの贈与も相続時精算課税の対象となっています。
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(3)相続時精算課税のメリット活用法
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相続時精算課税では、2,500万円までは贈与税がかからないため、子や孫が家を建てるなどまとまった資金を必要とする時に活用できます。
対象となる贈与財産も、その種類、贈与回数、金額に制限がないため、子や孫が必要なタイミングで何回かに分けて2,500万円まで贈与をすることができます。
また、相続時精算課税では、相続時に相続税の計算の対象に含められますが、その評価は、贈与時の評価とされています。そのため、開発などにより不動産価格の上昇が見込める場合などは、相続時精算課税を活用すれば、値上がりする前の評価額で相続税が計算されます。
3.住宅取得等資金の贈与
人生でまとまった資金が一番必要となるのは、住宅を購入する時です。子どもや孫が住宅を取得する場合に資金を無税で贈与し、相続財産も減らせる制度が期間限定で設けられています。
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(1)住宅取得等資金の贈与の非課税
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平成31年6月30日まで、親や祖父母から子や孫へ住宅を新築・取得または増改築するための資金の贈与を受けた場合、非課税とされています。
非課税金額については、契約期間や住宅の種類により異なりますが、毎年非課税金額が縮小していくため、早いタイミングでの活用が効果的です。
この住宅取得等資金の贈与の非課税は、相続時精算課税と併用することが可能です。両制度を併用する場合、相続時精算課税の非課税金額の2,500万円とあわせて、最大3,700万円を無税で贈与することができます。
まとめ
相続と贈与のどちらが得かは、単純に比較するものではなく、さまざまな贈与の制度を活用することで、トータルでかかる税金を最小にするとともに、家族で必要な資金を必要なタイミングで承継できるように考えていくことが大切です。