曇りの日でも部屋を明るくする窓
公開日:2016/07/04
日当たりが悪く昼間でも暗くなりがちな部屋を、窓ガラスを変えるだけで明るくする窓、それが「明るくすウインドウS」です。その仕組みや生活と明かりについて、大和ハウス工業総合技術研究所の玄と伊東に聞きました。
┃昼間でも暗くなりがちな部屋も明るくしたい!
北側や隣地と近接して、昼間から照明が必要な部屋の自然採光を諦めていませんか?そんな部屋を快適に自然光で過ごすための窓が「明るくすウインドウS」です。
通常、日光は下に落ちますが、明るくすウインドウSは窓ガラスで光を屈折・拡散させて天井の反射を利用し、部屋全体の明るさを向上させます。窓の大きさを変えることなくガラスを変えることで、照度が約1.5倍※明るくなります。
※条件によります。
(一般的な窓の場合)
(明るくすウインドウSの場合)
「天井にまず光を集めることで、お部屋全体を明るくできるようにしています。」と、伊東はいいます。住まいのインテリアは、壁や天井が白っぽく、床が茶系でコーディネートする傾向にありますが、光は茶系色にあたっても跳ね返りません。弊社のウォルナットという濃い床材だと反射率は10%を切り、明るいバーチでも30%程度。それが、白っぽい内装材だと反射率は80%前後になります。例えば、白い服を着たほうが明るい顔色に見えることがありますが、これは衣服の反射光が顔を照らすことによるものです。それと同じ考え方です。
天井内装材は、生成より白っぽい色を選ぶと効果的です。見た目は明るい淡いピンク系でも白に比べれば反射率は下がります。また、模様入りを避ければ凸凹した柄でも問題ありません。
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(プチコラム)~白の効果~
洗濯物を干すときに下に白いシートを敷くと、早く乾きますよ。
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┃開発のきっかけ
2012年夏から開発を開始しました。「実は、部屋を明るくしようと思って開発したわけではなく、健康配慮型住宅の開発過程に生まれました。」と、玄はいいます。健康といえば重視したいのが日当たり。そんな日当たりをよくするものを開発しようと試行錯誤するなかで、明るくすウインドウSが生まれました。また、明るくすウインドウSで使っている素材は窓用に開発されたわけではなく、液晶テレビの中で光を均一に拡散させるための素材だったとか。それを建築に応用したら明るくなるのでは?という発想からスタートしたそうです。
(明るくすウインドウの仕組みを、模型を使って説明する玄)
もちろん、明るくすウインドウSには健康配慮の側面も持ち合わせています。都市生活で自然光は不足しがちになるため、照明で代用するという考えもありますが、人間の心身を健やかに保つためには、自然光の持つ明るさと色温度(光の色味)の変化が深く関係しています。
開発過程で明るくすウインドウSを使った部屋で色温度を計測した際、一般的な窓からの採光より色温度の高い光色(青味がやや強くさわやかな光色)になりやすいことが分かりました(色温度が青っぽい=空の青さをイメージ)。起床後、色温度の高い光を浴びることで、日中がより活動的になり理想的な生活リズムを整えることにもつながります。
┃開発で困難だったこと
開発から半年経過した頃は、「光が増えないのに何で明るくなるんだ?」と社内でも信じてもらえない時期がありました(笑)。そこで、実物で体感できるブースを設けることで、ようやく認知されるようになったのです。この体感ブースが予想外の結果を生み出し、「プライバシー配慮を兼ねられる」という評価が高まり、商品化への後押しとなりました。トシナカでは周囲の目が気になり、晴れていてもカーテンを閉じたり、窓自体を計画しない家もあります。明るくすウインドウSは屈折により外から室内が見えにくい効果があり、明るさと目隠しを同時にかなえるという新しい価値につながりました。
(一般の窓の場合)
(明るくすウインドウSの場合)
合わせて、窓としての機能も高く、必要な明かりは拡散させて、紫外線は99%以上カットします。劣化も少なく特別なメンテナンスも不要です。
┃明るくすウインドウSは曇りの日でも効果を発揮
明るくすウインドウSは、晴れの日より曇りや雨の日の方が効果を発揮します。なので、トシナカに限らず、日照時間が短い天候のエリアにもおススメです。「梅雨の時期は家が暗くて憂鬱になりやすい」というお客様にもぜひ体感していただきたいです。
明るくすウインドウSは、開発から3年かけて商品化、現在特許出願中のダイワハウスの技術です。その他にも、xevoΣ(ダイワハウスの戸建商品)にはホルムアルデヒドを含まない断熱材、内装材の化粧シートや現場施工用接着剤から、トルエンやキシレンなどを排除する技術など、目に見えない健康配慮の技術が搭載されています。
現状を諦めず、より快適に暮らしてほしい、そんな想いのこもった技術のご紹介でした。
大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所 主任研究員 玄晴夫(写真左)
一級建築士・環境計量士
騒音問題から音楽を楽しむ提案など音に関する専門家であるが、日あたりや断熱など住まいの環境全般に関心をもち研究に従事。
大和ハウス工業株式会社 総合技術研究所 研究員 伊東亜矢子(写真右)
一級建築士・照明士
照明や日照・採光など、建築物の光視環境に関わる開発・検証を担当。