我が子や孫が、大学に合格した、家を建てたといった場面では、
お祝いをしたくなったり、ちょっとは援助したくなるのが親心。
この財産を“あげる”という行為を、ちょっと専門的にいうと、“贈与する”というのですが、
じつは上手な贈与は、相続税の負担減にもつながるのです。
たとえば、お孫さんに300万円贈与したとしましょう。相続税は、相続する財産が多いほど、負担も大きくなる税金です。今贈与してしまうことで、相続する財産は減って、当然将来の相続税の負担も減るでしょう。
だけどそれなら、極端な話、全財産を贈与してしまえば、将来の相続税はゼロ、ということになってしまいます。
そんなことにならないように、と出来たのが贈与税。財産を“もらう”お孫さんは、贈与税を払わなければなりません。1年間に300万円もらったら、お孫さんには、なんと19万円もの贈与税が課税されるのです。
贈与税は、1年間に合計いくら“もらったか”によって決まりますから、たくさんもらうと、贈与税の負担も大きくなるのです。なにせ、最高50%(平成27年以後の贈与は55%)の税率ですから、その負担を考えると、うかつに贈与できません。
だから、贈与税の仕組みを知って、上手に贈与をしたいところ。まず贈与税は暦年課税と言って、1年毎に計算します。相続税と同じく贈与税のかからないライン(基礎控除額)が年間110万円(基礎控除額)あって、1年間にもらう贈与額が110万円までだったら、贈与税の負担はゼロなのです。
だから、さきほどのお孫さんも、一度に300万円贈与されると贈与税がかかるけど、毎年100万円ずつ、3年間で300万円もらったとしたら、贈与税負担はゼロなのです。
贈与税は、こまめに少しずつ時間をかけて“もらう”ことで、負担が小さくなる税金なのです。
たとえば、子どもや孫が家を建てたり、リフォームするというときにも、資金援助してあげたいものです。
でも、相当大きな買い物ですから、援助額も大きくなりがち。当然、子や孫は贈与税を負担しないといけないでしょう。こういう時には、資金援助額500万円(省エネ等住宅の要件を満たせば1,000万円)までなら贈与税が非課税になるという『住宅取得等資金の贈与税非課税特例』を活用したいところです。
基礎控除額110万円と併せると、1,610万円まで贈与税負担なしで贈与できます(省エネ等住宅なら1,110万円)。現行法では、この特例が活用できるのは平成26年12月31日まで。子や孫への資金援助を考えるならお見逃しなく検討したいところですね(適用要件等、詳しくはこちら参照)。
贈与税のしくみや特例を知って上手に贈与すれば、相続税も軽減しながら、まさに一石二鳥のスマート贈与を実現できそうですね。
筆者プロフィール
- 海野裕貴税理士事務所
海野 裕貴(うみの ひろたか) - 税理士・CFP(r)・1級FP技能士・中小企業診断士・行政書士
- 証券会社、保険会社、FP会社等を経て、2007年5月に独立、税理士事務所を開業。相続、個人のタックスプランニングを中心にサービス展開中。
- ラジオFM横浜「教えて税理士さん」出演をはじめ、ハウスメーカー、証券会社、生命保険会社、損害保険会社他、講演多数。
- 主な著書 「事業承継成功のポイント50」「経営者のための勇退アドバイス」「大家さん・地主さん必見!不動産相続 成功の扉」「成功したい人が読む はじめての相続・贈与の生前対策」その他、「けんた君教えて!くらしのなかの税金知識シリーズ(全国法人会総連合)」、毎日新聞・浜銀総研・納税通信連載執筆等多数。現在「バンクビジネス(近代セールス社)」にて連載中。
- 海野裕貴 税理士事務所 HP : http://www.greatdivide.jp/
※当該ページは、平成26年4月15日現在の法律等に基づいて執筆しています。今後、税制改正により内容の変更が生じる可能性がありますので、ご了承ください。また、出来るだけわかりやすくご理解いただくために専門用語や制度を簡略化して表現していることもご了承くださいますよう重ねてよろしくお願い申し上げます。具体的な相談は税理士等の専門家へお尋ねください。