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コラム No.53-80

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戦略的な地域活性化の取り組み(80)公民連携による国土強靭化の取り組み【42】独居高齢者の孤立を世代間のニーズに応じた地域共生社会の醸成で解消する

公開日:2024/12/26

2024(令和6)年11月12日、国立社会保障・人口問題研究所が「日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)令和6(2024)年推計」を公表しました。内閣府が2024年(令和6年)6月21日に公表した「令和6年版高齢社会白書」の内容も参照しながら、少子高齢化社会における地域の住・生活環境の動向について紹介します

国内の高齢化、世帯数の将来推計の概要

内閣府の「令和6年版高齢社会白書」によれば、2023(令和5)年10月1日現在の日本の高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)は29.1%と、世界で最も高い水準にあります。さらに、今後も続くであろう少子化や人口減少傾向に加え、平均寿命の延びも相まって、高齢化率は2040年には35%を超え、2070年には約4割に達すると推計されています。
一方、人口問題研究所の「日本の世帯数の将来推計」によると、平均世帯人員はすべての都道府県で減少が続き、平均世帯人員が2人を下回るのは、2040年には26都道府県、2050年には34都道府県に及び、最も平均世帯人員が少ないのは東京都と北海道の1.78人と推計されています。また、単独世帯の割合(独居率)はすべての都道府県で上昇し、2050年には、単独世帯が40%を超える都道府県が大都市地域を中心に27都道府県に増加し、東京は54.1%と最も割合が高くなる見込みです。そのうち、65歳以上の単独世帯の割合(独居率)は、2050年に32道府県で20%を超えるとされ、3分の2の都道府県で、5世帯に1世帯が高齢者の単独世帯になることが予測されています。特に、東京都(34.8%)、大阪府(32.1%)、高知県(30.6%)、京都府(30.2%)、沖縄県(30.0%)では65歳以上の独居率が30%を超えると推計されています。
急激な人口減少・超高齢化社会の中で、世帯人口の減少は、同居する家族のいない高齢者などの生活や安全を、地域でどのようにして守っていくかという大きな社会課題となっていくはずです。また、高齢者独居世帯の増加は、空き家問題等を招く要因でもあり、地域の住宅や生活環境の維持、安心・安全な街づくりの観点からも、共助、公助による高齢化社会に向けた地域イノベーションが急がれるのではないでしょうか。

高齢者の生活意識 ~令和6年版高齢社会白書から~

「高齢社会白書」から、高齢者(ここでは65歳以上の者とします)の生活実態や生活意識について見てみます。
高齢者の居住環境を見ると、居住する住宅の約8割は持家とされていますが、60歳以上で住み替え意向を持つ人は約3割に上ります。その理由としては、住宅が広すぎることや部屋数が多すぎること、防災・防犯面、健康・体力面での不安など、現在の住宅の住みづらさを挙げた人の割合が高いとされています。また、地域の生活環境について重視することとしては、医療・介護へのアクセスや、移動や買い物の利便性を挙げる人の割合が高く、特に女性は男性に比べて、住宅が高齢者向けに設計されていることや、親しい友人や知人が近くに住んでいることを望む人の割合が高くなっています。そして、居住している住宅や地域に対する満足度は、高齢者の生活における幸福感の程度と強い正の相関関係があるといわれ、地域コミュニティの形成が重要な要素でもあるようです。この調査結果から考えると、独居高齢者は、できれば住み慣れた地域で、親しい友人や知人とともに、可能な限り長く住み続けることを望んでいるようです。
従来より、公民の高齢者施設(いわゆる老人ホーム)が各地に存在していますし、また、自立生活が可能な高齢者向けには、公設のケアハウスや民間の(ケア)サービス付き高齢者向け賃貸住宅があります。一方で、施設の運営コストや高齢者の負担、生活満足度を考えると、今後急増する独居高齢者を持続的に地域でサポートすることが可能なのか、今一度検討が必要なのかもしれません。

ホームシェア(シェアハウス)という選択肢

「シェアハウス」とは、基本的に複数の住人が一軒家で共同生活を行う住宅であり、住人はそれぞれ独立した個室を占有し、リビングやダイニング、キッチン等を共有スペースとして利用する賃貸住宅です。一人暮らしの孤立感や孤独感を和らげるとともに、占有面積を抑えることで賃料が安いというメリットから、学生等若者や高齢者向けの物件が増加傾向にあるといわれています。その中で、最近注目を集めているのが「異世代ホームシェア」です。
「異世代ホームシェア」とは、家族の独立等で空き部屋がある高齢者の住宅に、学生等若者が同居し共同生活をする住まい方です。共同生活とはいえ、介護ではなく、両者が一定のルールで適度な距離を保ちながら生活します。若者にとっては、安価で利便性の高い住宅を確保することができる経済的なメリットがあり、高齢者にとっては、孤立を解消し生活への安心感を得られるという大きなメリットがあります。以前、国土交通白書でも紹介されたことがあり、「異世代ホームシェア」を推進している「NPO法人リブ&リブ」の場合は、「血縁をこえた絆を作る」ことを目的として、同居後も専門コーディネーターが高齢者と若者両方の相談相手となり、お互いが楽しく支え合って生活するための潤滑油として活動しているようです。
独居の高齢者が孤立していくことが社会的な問題となる中、高齢者と若者が同居し、互いが支え合って居場所をつくる「異世代ホームシェア」という形態は、新しい住宅の活用法となる可能性もあります。 人口減少や少子高齢化によって、血縁や地縁関係が地域で希薄になる傾向がある中で、新たな住民間の絆を作る試みは、新しいようで古くからある考え方です。都心部では、スクラップ&ビルドによる都市機能のリノベーション/再開発が進んでいますが、都市周辺部においては、既存施設を再活用して住民間のニーズに応じた共生を醸成することも、地方再生には有効な手法かもしれません。

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