「男性育休」から変わる、
家族と仕事のウェルビーイングな関係
多様性を組織の強みに変えるダイバーシティ経営と、働く人のウェルビーイング向上の観点から、仕事を人生の一つの要素として捉える「ワークインライフ」の考え方が広がりを見せています。家族、学び、趣味などの要素と、仕事が程よく調和するあり方もまた、人それぞれに多様なものです。
こうした多様なライフスタイルに対応した働き方を後押しするために、2021年には育児・介護休業法が改正され、国内企業における男性の育児休業(男性育休)の取得率が向上しています。しかし、その多くは数日程度の取得にとどまっている現状もあります。誰もが望む形で仕事と育児を両立し、働き続けることができる社会をつくるために、私たちはどのようにマインドや行動を変えていくべきでしょうか。
そこで第9回の対話ゲストは、産業・組織心理学やキャリア心理学の専門家であり、男性の育児休業を研究テーマとする筑波大学の尾野裕美准教授をお招きしました。1カ月以上の長期の育児休業を取得した社員二人の体験を共に振り返りながら、「男性育休」がもたらす個人と組織の変化について対話します。
- ※本稿は2024年1月30日取材時点の内容です。
CONTRIBUTORS
今回、対話するのは・・・
育児の大変さは想像以上
家族との仲間意識が生まれた
柴川 圭輔
大和ハウス工業株式会社
九州支社 設備技術部
設備二課 主任
2009年、大和ハウス工業に入社。
設備設計・施工を行う設備部門を担当。結婚当初より、単身赴任で家族と離れての生活を送っていたが、第2子の誕生に合わせて、2022年7月から1年間、育児休業を取得。現在は再び単身赴任をしているが、週末は家族と過ごす生活を送っている。
工場長の勧めで育休を取得
幸せの基準が変化した
高橋 佑典
大和ハウス工業株式会社
奈良工場 建築生産管理課
主任
2016年に入社、堺工場(現在は奈良工場に移転)に配属。
建築鉄骨の製作や予算、物件の管理を担当している。妻の妊娠期間と転職活動が重なり、工場長の勧めから、第2子誕生後の2023年9月から3カ月間の育児休業を取得。
子育ての大変さを経験し
長期の男性育休を研究
尾野 裕美
筑波大学人間系准教授
日本製粉株式会社(現:株式会社ニップン)の人事、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)のキャリアカウンセラー、株式会社リクルートマネジメントソリューションズの研究員を経て独立し、大学生のキャリア形成支援に従事。その後、横浜商科大学専任講師、明星大学准教授を経て2023年4月より現職。
筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達科学専攻修了、博士(カウンセリング科学)。
著書に『個人と組織のための男性育休: 働く父母の心理と企業の支援」(ナカニシヤ出版/2023年5月)などがある。
育児休業を取得する男性だけでなく、育児休業を支える上司やチームメンバーなどの周囲の人々も含めて、1カ月以上の「男性育休」がもたらす影響や変化とはどのようなものか、一緒に考えてみましょう。
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長期の「男性育休」取得、背景にあるそれぞれの事情
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私は、電気や衛生、空間といった設備に携わる部署で設計を担当しています。
地元は熊本ですが、大阪本社に入社して以降、仙台転勤となり、その後は九州に戻って鹿児島、宮崎、そして現在は福岡で勤務しています。
結婚した当初から単身赴任で家族とは分かれて生活していて、一人目の子どもが生まれたときは、妻が育休を取得しました。妻は公務員で、二人目のときは「今度はあなたの番ね」というような流れになり、2022年の7月から1年間、思い切って私が育休を取得しました。
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夫に育休を取ってほしいと考える妻は多いと思います。
でも、なかなか夫の側が「じゃあ、取るよ」となるケースは、まだ少ないのが現状です。
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そうですね、私の場合は、夫婦で少しずつ話を進めていたので抵抗はありませんでした。会社の上司の理解も得られていたので、スムーズに運びましたね。何よりも、家族と一緒に住んだことがなかったので、思い切って育休を取ってみよう、と思えたことが大きいかもしれません。
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私は2016年に入社して、現在は奈良工場で建築鉄骨の製作や予算、物件の管理を担当しています。
2019年に一人目の子どもが生まれたときは、妻に育休を取得してもらいました。
二人目のときも、当初は自分が育休を取るという発想は全くありませんでしたが、工場長から説明があってはじめて育休が選択肢となって、妻に話したらものすごく喜ばれて。
2023年9月から3カ月間、妻と二人で育休を取りました。
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私は、大学卒業後は企業で人事や社員研修プログラムをつくるなどの仕事をしていました。その後、フリーになり、大学教員の仕事は現在で9年目です。
当時は男性の育休取得率は0.5%*でした。
いざ子どもが生まれてみたら、出産で体はボロボロ、夜泣きもあり、自分の時間も取れず、かなり精神的に追い詰められました。そうした育児の大変さについて、昨今では多くの人から課題として聞かれるようになり、さらに国としての政策的な動きもあって、7年ほど前から「男性育休」をテーマに研究しています。
*令和3年度雇用均等基本調査(厚生労働省,2022)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/03.pdf
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2023年に公表**された男性の育休取得率は17%と上昇してきています。
でも、取得したのは3日間だけ、というケースも多いのが実情です。それではあまり意味がないですよね。
そこで私の研究は「1カ月以上」の育児休業を取得した男性とその企業を対象にしています。以前、大和ハウス工業の人事の方に男性育休についてお話を伺ったこともあります。
柴川さんは1年、高橋さんは3カ月の育児休業を取得されたということで、今日はお二人から生々しいお話が聞けるかな、と楽しみにしてきました。
**「令和4年度雇用均等基本調査」の結果概要(厚生労働省,2023)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r04/07.pdf
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私の妻も尾野先生と同じように、一人目が生まれたとき、すごく大変そうにしていたのは知っていました。
それでも、自分は仕事で遅い時間に帰宅した後、少しだけ家事を手伝うくらいで。
その後、妻は育休が明けて復職したのですが、転職のため会社を辞めると決めたタイミングで二人目を授かっていることが分かりました。
さらに、妊娠期間中に転職活動をして、出産後3~4カ月で働き始めないと、上の子が保育園を退園しなければいけないという事態になりました。正直、どうしたら良いか分からなくて、とても悩みました。
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大和ハウス工業の場合は、男性も育児休業が取りやすいという印象があります。制度として育児休業はご存じだったはずですよね。
それでも、自分がそうした状況になったときに、「そうだ、育休取ろう」とはならないのだとすると、やはりハードルを感じるものなのでしょうか。
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そうですね、制度があることは知っていましたが、自分が担当している業務を、自分が抜けたら誰かにやってもらわなければいけない、ということもありますし、工場長に言われて、初めて選択肢になったと思います。
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私も一人目のときは、育休は選択肢にありませんでした。もう5年前ですが、当時は担当する業務を私と上司の二人体制で回していたので、自分が抜けたらどうなるのか想像がつかない、という状況でした。
二人目のときは、同じ業務を担当するメンバーが複数人集まっていたので、引き継ぎをする算段がつき、育休を取りやすかったといえます。
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5年前と比較して考えると、全般に男性育休は取りやすくなってきていると思います。
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確かに、会社の雰囲気がとても変わったと感じます。
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変わりましたね。
2
育休前の引継ぎが仕事を「見える化」し、
チームの生産性を高める
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少し調べてみたところ、私が育児休業を取得した後に、自分の部署内で、他に4人育休を取った人がいました。内訳は、5日程度の短期間が2人、3カ月が1人、5カ月が1人です。
さらに、同じフロアの他部署でも2人、10カ月と12カ月の取得予定者がいるそうです。
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うちの場合は、私とほぼ同時に一気に3人が育休を取りました。その後もう1人います。
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周りに取得する人がいると、「取っていいんだ!」となって、どんどん浸透していくところもありますね。
でも、育休は当然の権利でありつつ、実際のところ、期間中は仕事に穴をあけることにもなりますよね。
育休に入る前に、職場に対して気を付けたことや、配慮したことは何かありましたか。
職場での打ち合わせの様子(高橋さん)
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まず引き継ぎのための資料を丁寧につくりました。何がどこまで進んでいるのかが分かるようにしなければ、ということを考えました。当時は、同じチーム内で、メンバーの誰がどれだけ忙しいのかがあまり見えるようになっていなかったのです。それで、自分が抱えているものをすべて洗い出していきました。
育休から復職してからは、工場長から「仕事を個人で抱えずに、見えるようにしていこう」との呼びかけがあり、チーム全体でクラウド上の共有フォルダを活用するなどして、誰かが急に病気とかで休んでも、周りの人がフォローできるような仕組みづくりにも取り組んでいるところです。
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高橋さんの他に2人も育休を取ったメンバーがいらしたので、職場としては大変だけど、でもそこまでインパクトがあると、逆に仕事をちょっと見直す良いきっかけにはなったかもしれないですね。
柴川さんは育休期間が1年間となると、何人かに仕事を少し振り分けて引き継ぐような形でしょうか。
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私も引き継ぎは丁寧にやりました。一人で担当している業務が多いので、だいたいは一人に引き継ぎますが、チーム内で振り分けをしました。
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仕事を引き継ぐ難しさや、受け取る側からのネガティブな反応など、何か感じたことがあればお聞きしたいです。
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私の部署では、皆さん快く受け止めてくださいました。
社会の風潮もあるかもしれませんが、ネガティブに捉えられたと感じる方はいなかったです。
ただ、やっぱり自分が抜ける穴を誰かにやってもらわないといけないので、自分の中に申し訳なさだけはありました。
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うまくきれいに引き継げなかったときにどうすれば良いのか、ということへの対処方法を考えることも、これから男性育休を組織全体に広げていく上で課題になるかもしれません。
例えば、営業職の場合、「お客さまを引き継ぐのがもったいない」と思ってしまうと、育休は取れないのだそうです。お客さまを引き継ぐことは、後輩を育てることであり、それも自分の仕事だと捉え直したときに、ようやく腹が決まったっていう人もいます。
そういう意味では、今与えられている仕事だけで評価されようとするのではなく、組織の中の自分の役割を考えていけると、育休の捉え方も変わるだろうと思います。
職場での打ち合わせの様子(柴川さん)
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そうですね。私は技術職ですが、チーム制で、欠員が出ても他の人が分かるような仕事のスタイルにしておかないといけません。
ちなみに、私がちょうど復帰してから2カ月後ぐらいにまた誰か1人、同じ部署で育休に入る人がいたので、その時は、自分が喜んで引き受けました。
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私も、育休中と復職してから、周りにすごく協力してもらったので、自分もその人たちに協力しなきゃいけないなって思いましたね。
以前はどちらかというと、自分の仕事は自分のものだ、というようなタイプだったのですが、復職してからは、そう言っていられない状況もあって、周りにお願いすることが増えました。
その一方で、チーム内で誰が、何を、どれだけの仕事を持っているかが見えるようになったので、「これ、手伝います」「自分がやっておきます」というようなことも増えています。
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「仕事は自分一人でできるし、成果も出せる」と思って100%を仕事に傾けていたような方にとって、育休は周りに助けられて支えられて自分があるのだ、ということに気付く、良い機会にもなりますね。
そうした人が上司になってくれると、部下としては仕事がやりやすいと思います。
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育休取得がもたらしたウェルビーイングの変化
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チームを組んで協力しながら進めるという意味では、育児や家事も、仕事と同じですよね。
お子さんが生まれると夫婦関係が変わると思いますし、いざ育休を取って、四六時中家族の世話をするとなった時に、夫婦関係など、何か変化はありましたか。
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仲間意識が生まれた、ということでしょうか。考え方が似てきたというか。一人目のときは部外者感があって、たまにしか帰らないし、たまにしか見ないし、気が付いたらハイハイしていて、寝返りしはじめて、歩いていた、という感じでしたが、二人目はそれを一緒に見てきたという経験を共にしたことで、たくさん教えられることもありましたし、考え方が似てきたように思います。
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私も、一人目のときは、同じような状態でしたね。
二人目のときに、自分が育休を取ると妻に話したときに「やっと父親になった」と言われたくらいです。
昨日、妻と育休について振り返ってみたのですが、楽しいこととつらいことを共有できたのが良かったと言われました。妻と話をする機会がものすごく増えたことも、自分にとって、とても良かったなと思いました。
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そうですね、私も育休中、妻と上の子どもが楽しそうにしてくれていたように思うので、良かったなと思っています。
自分にとっての幸せの基準が、家族寄りになったというか。考え方の根本が少し変わったように感じています。
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幸せ、でいうと、これまでは仕事でどれだけ成果を出すかが自分の幸せだったのが、完全に変わりました。
今では家族がどれだけ、楽しくて幸せかどうかが一番になりました。
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仕事で成果を出すことが自分の幸せだという考え方が、いかに限られた世界で感じていた幸せかということに、子育てを通して気付く。自分の幸せは仕事だけではなく、家族にあるのだという人は育休を取った男性から聞かれることが多いです。
お二人も含めて、共通しているのが、だからといって育休の後、仕事をないがしろにはしていない。幸せの基準が変わっても、やりがいや面白さを感じながら仕事をされているのだろうなということが伝わってきます。
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そうですね、とにかく仕事中心の生活だったのが、育休を取って復職してからは、かなりメリハリをつけて仕事をするようにはなりました。スパッと仕事を切り上げて、家に帰ったら仕事のことは考えないような生活になりました。
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それで意外と回るんですよね。時間で仕事を区切っても、仕事の質は変わらないので不思議に感じるくらいです。
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私の場合は、もともと仕事だけが楽しみというよりも、自分の趣味や家族のために仕事を頑張ろうというタイプです。育休を通じて、より家族に喜んでもらうために頑張るほうへと仕事へのモチベーションがシフトしたように思います。
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育休を取ると、視野が広がったり、仕事に対してモチベーションが高くなったり、中には家事をいっぱいこなす中で、効率的に仕事もできるようになったりと、さまざまな形で仕事にプラスになることもあると思います。
でも、育休は、仕事にプラスになるために取っているわけではありません。仕事への良い影響というのは、あくまでも「おまけ」の話です。
上司や周りの人は、プレッシャーとか、変な期待はせずに、純粋にいろいろなニーズがある従業員を会社として受け入れて、互いに、みんなで支えながらやっていこう、というのが基本です。
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個人的には、育休は、取りたかったら取ればいいという考えでいます。でも、せっかく育児休業で家族と一緒に過ごそうと思うのであれば、長めに取るのが良いと思います。数日間では、ただの休みですし、育児に対する当事者意識が芽生えないだろうと思います。
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家族それぞれにちょうど良い期間があると思いますが、私の場合も、もう少し長くても良かったなとは思っています。妻と同時に3カ月取得して、同時に復職したので、育休の後が大変でした。
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育休は終わっても育児は続く、ということですよね。上司たちの育休の取得に対する理解は高まっていますが、復職した後も育児は続いているということを忘れてはいけません。
そして最後にひとつ触れておきたいのは、育児に限らず、介護や病気、あるいは学び直しなど、それぞれのタイミングで、仕事以外のさまざまな事情を抱える社員を理解し、サポートすることも組織には求められているということです。
今後は、長期の男性育休の取得を通じて得られた組織や個人の経験価値を、それ以外の領域にも生かしていくことができると良いと思います。
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まとめ
「男性育休」は、これまで女性に偏りがちだった育児の「負担を分散」させ、「喜びを共有」する家族と組織の取り組みである。男女ともに育休は、その後も続いていく育児に向けて、自分の人生における家族と仕事の最適配分を見いだし、新たなウェルビーイングの基準を定める契機にもなりえる。
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対話をつなげよう
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私は、対話に参加した高橋さんが働く奈良工場で工場長を務めています。奈良工場の社員70名には、70通りの価値観や家庭環境があります。育児に限らず、家庭に悩みごとを抱えたときには、すっと自然に相談できて、それぞれの「こういう働き方がしたい」をかなえられる職場をつくりたいと考えています。家庭というベースがあるからこそ仕事に集中することができ、本人のモチベーションが上がり、仕事のパフォーマンスも上がると思うからです。
また、社員には「仕事はひとりでするものではない、みんなでやるものだ」としてワークシェアを推奨し、業務の見える化・標準化に取り組んでいます。ひとりで抱え込み、その人にしかできない仕事にしてしまうと、育休や転勤、定年などの引継ぎが必要な場面で影響が出てしまいます。ワークシェアが進めば、突発的な対応もとりやすくなりますし、特定の人に残業が集中することもなく、業務負荷の平均化をはかることもできます。
これからは多様性の時代と言われますが、大切なのは、性別や年齢、国籍、障がいの有無などの違いに関わらず、同じ職場で働く仲間としてお互いを受け入れ合える雰囲気が職場にあることでしょう。これからも、働きやすい、働き続けたいと思える職場環境づくりに取り組んでいきたいと考えています。
大和ハウス工業株式会社
奈良工場 工場長
西本武志